2009年 09月 18日
愚の骨頂 |
このところ金融株の低落が目立っているが、背景に二つの問題が指摘されている。一つは、先のG20で打ち出された銀行の自己資本規制の強化だ。もう一つは、新任の亀井静香郵政改革・金融担当相のモラトリアム発言だ。漸く一息つきかけた銀行経営が再び混乱しかねない情勢だ。
前者は、普通株の比率を4%以上に増やせというものだ。発行株数が増えると、1株当たりの利益が減る「希薄化」が進むことになる。これが株価の足を引っ張る原因となっている。国際業務を手掛けるには自己資本比率が8%以上でないとダメだ。現在、日本の銀行はこれをクリアしているが、中核的資本の内容を見ると、普通株に比べ優先株や優先出資証券などの比率が高いのが現状だ。新しい基準に合わせるには、さらなる普通株の発行が迫られることになる。
資本の質を向上させることは、銀行経営の健全化には役立つ。一時的に株価には影響を与えるが、長期的に見ると悪いことではない。銀行側からすれば、優先株などは高配当で資金コストも高い。普通株での資金調達の方が、圧倒的に有利である。
規制強化の裏には、日本の銀行の存在感が高まるのを欧米が牽制した、との見方があるが、具体的内容がまだ確定したわけではない。来週にはピッツバーグでG20が予定されている。鳩山首相も出席する予定だ。きちっと日本側の考え方を主張し、不利にならないように努力しなければならない。
理解できないのは後者だ。中小企業や住宅ローンの借り手に対し、3年程度元本返済を猶予するというのが内容だ。「平成の徳政令」とも呼ばれている。この考え方は、民主党、社民党、国民新党の3党が、先の国会に法案提出、廃案となった経緯がある。今回、与党としてそれを再び持ち出すことにしたものだ。
銀行側としては、金利さえ支払わればどこに貸していようと構わない。問題は、最終的に元本の取り逸れがないかだ。そもそも猶予を求める借り手は、資金繰りに行き詰まったところだ。いつ破綻して不良債権化するかわからない案件であり、大きなリスクを抱えることになる。国が法律で「貸し渋り」を防止するとともに、すでに貸し付けた分についての契約条件の変更までも義務付けるのはおかしな話だ。銀行は社会的使命があるものの、国の機関ではないのだ。
バブルの崩壊時に、銀行は巨大は不良債権を抱えた。貸し手責任だけが問われ、塗炭の苦しみを味わった経験がある。返済能力があり、成長性のある企業に融資を選別していくのは、経営の基本からして当然だ。信用度の低い企業に無理に貸し出させた上に、返済を強制的に猶予させるのは、銀行経営の上からすれば極めて危険なことだ。
融資案件を選別したり、融資や返済の条件を決めるのは、銀行が顧客との間で個別に対応するべきものだ。国が一律に関与すべき事柄ではない。もしそれをするなら、国自体が債務を保証して、最終的に尻を拭うことが必要だ。
中小企業や個人ローンの焦げ付きについては、必要があれば国が救済策を講じるべきである。民間に付け回しするのは愚策である。亀井氏は、銀行業務に口を出す前に、郵政を改革して郵貯や簡保資金で不良債権を買い取ることでも考えた方がよかろう。 (05年5月「諸悪の根源」、08年12月「貸手責任」など参照)
前者は、普通株の比率を4%以上に増やせというものだ。発行株数が増えると、1株当たりの利益が減る「希薄化」が進むことになる。これが株価の足を引っ張る原因となっている。国際業務を手掛けるには自己資本比率が8%以上でないとダメだ。現在、日本の銀行はこれをクリアしているが、中核的資本の内容を見ると、普通株に比べ優先株や優先出資証券などの比率が高いのが現状だ。新しい基準に合わせるには、さらなる普通株の発行が迫られることになる。
資本の質を向上させることは、銀行経営の健全化には役立つ。一時的に株価には影響を与えるが、長期的に見ると悪いことではない。銀行側からすれば、優先株などは高配当で資金コストも高い。普通株での資金調達の方が、圧倒的に有利である。
規制強化の裏には、日本の銀行の存在感が高まるのを欧米が牽制した、との見方があるが、具体的内容がまだ確定したわけではない。来週にはピッツバーグでG20が予定されている。鳩山首相も出席する予定だ。きちっと日本側の考え方を主張し、不利にならないように努力しなければならない。
理解できないのは後者だ。中小企業や住宅ローンの借り手に対し、3年程度元本返済を猶予するというのが内容だ。「平成の徳政令」とも呼ばれている。この考え方は、民主党、社民党、国民新党の3党が、先の国会に法案提出、廃案となった経緯がある。今回、与党としてそれを再び持ち出すことにしたものだ。
銀行側としては、金利さえ支払わればどこに貸していようと構わない。問題は、最終的に元本の取り逸れがないかだ。そもそも猶予を求める借り手は、資金繰りに行き詰まったところだ。いつ破綻して不良債権化するかわからない案件であり、大きなリスクを抱えることになる。国が法律で「貸し渋り」を防止するとともに、すでに貸し付けた分についての契約条件の変更までも義務付けるのはおかしな話だ。銀行は社会的使命があるものの、国の機関ではないのだ。
バブルの崩壊時に、銀行は巨大は不良債権を抱えた。貸し手責任だけが問われ、塗炭の苦しみを味わった経験がある。返済能力があり、成長性のある企業に融資を選別していくのは、経営の基本からして当然だ。信用度の低い企業に無理に貸し出させた上に、返済を強制的に猶予させるのは、銀行経営の上からすれば極めて危険なことだ。
融資案件を選別したり、融資や返済の条件を決めるのは、銀行が顧客との間で個別に対応するべきものだ。国が一律に関与すべき事柄ではない。もしそれをするなら、国自体が債務を保証して、最終的に尻を拭うことが必要だ。
中小企業や個人ローンの焦げ付きについては、必要があれば国が救済策を講じるべきである。民間に付け回しするのは愚策である。亀井氏は、銀行業務に口を出す前に、郵政を改革して郵貯や簡保資金で不良債権を買い取ることでも考えた方がよかろう。 (05年5月「諸悪の根源」、08年12月「貸手責任」など参照)
by everyoung
| 2009-09-18 13:40
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