2009年 11月 14日
過剰防衛 |
千葉地裁で先日、車同士のトラブルで殺人事件を起した加害者に対し懲役20年の罪を言い渡した。被害者の男二人が、加害者とその父親に作業工具で殴りつけたため、牛刀で反撃して被害者を殺してしまった事件だ。
裁判では、「防衛行為としては、正当性を逸脱しているが、生命を守る意図は否定しがたい」として過剰防衛を認めた。殺人罪にはならなかったため、減刑措置(求刑27年)がとられた。それにしても実質無期懲役に近い重い刑罰である。
作業工具は使い方によっては凶器となる。これで殴りかかったなら「殺意」があると見ることができる。作業工具は恐らく、予め用意されたものではないだろう。加害者の牛刀は何のために所持していたのかは、報道の範囲では不明だ。まさか事件を予見して、隠し持っていたのではなかろう。双方とも、出会い頭の事件であったと見るのが妥当だ。
先に仕掛けたのは作業工具の側で、加害者は身の危険回避から牛刀を持ち出したものと想定される。牛刀がどの程度のものであったかは分からないが、仮に銃刀法違反であっても、相手の作業工具との比較では、どちらも「武器」であることに違いない。
正当防衛と過剰防衛の線引きは難しい。正当防衛は、急迫不正の侵害に対する必要最小限の防衛行為に認められている。身を護るためにやむを得ずにした行為であり、通常なら犯罪であったも罰せられない。逃げる余地があって反撃した場合にも適用される。
よく例に出されるケースとして「西船橋駅事件」がある。ホームで酔っぱらいの男に絡まれている女性に、周辺の乗客が手助けしなかったために、女性が男を突き放した。その弾みに男は線路上に落ち、電車に轢かれて死んでしまった。女性は正当防衛が認められ無罪となった。
通常、防衛目的だけで反撃するのは困難だ。牛刀事件の場合、作業工具で襲って来た相手に対し、警官ならピストルを抜いたであろう。至近距離なら威嚇する余裕はない。撃っても殺しても警官の罪は問われない可能性が強い。一般人なら重罪となる。
相手が刃物を持って襲いかかり、これに対し素手で対応。相手を突き飛ばして打ち所が悪く、死んでしまった場合、恐らく正当防衛となるだろう。この逆なら過剰防衛か殺人罪だ。相手は素手だが、複数で先に殴りかかって来たのに対し、一人で素手で対抗。結果として相手が死んだり、大怪我したケースでは、正当防衛が必ずしも成立するかどうかは微妙だ。
過去においてワガハイは、他人の乱闘に割り込み両者を引き離したことや、電車内で女性に嫌がらせをしていた酔っぱらいを制圧したことがある。ホームを汚していた男に注意したら、傘の先を突きつけて攻撃されたこともある。いずれも双方とも怪我はなかったが、一つ間違えば何が起こったかわからない。
乱闘場面で、相手に手加減を加えることは非常に難しい。特に身に危険が及ぶ場合は、瞬間的に捨身ワザを掛けることもあり得る。その場合、相手が死なないまでも大怪我する可能性は大だ。どこまでが正当防衛かを考えて対応するのは、現実的には無理である。実戦経験のない裁判官が、法の世界だけで判断するには限界がある。(06年6月「時代錯誤」、07年1月「名誉殺人」参照)
裁判では、「防衛行為としては、正当性を逸脱しているが、生命を守る意図は否定しがたい」として過剰防衛を認めた。殺人罪にはならなかったため、減刑措置(求刑27年)がとられた。それにしても実質無期懲役に近い重い刑罰である。
作業工具は使い方によっては凶器となる。これで殴りかかったなら「殺意」があると見ることができる。作業工具は恐らく、予め用意されたものではないだろう。加害者の牛刀は何のために所持していたのかは、報道の範囲では不明だ。まさか事件を予見して、隠し持っていたのではなかろう。双方とも、出会い頭の事件であったと見るのが妥当だ。
先に仕掛けたのは作業工具の側で、加害者は身の危険回避から牛刀を持ち出したものと想定される。牛刀がどの程度のものであったかは分からないが、仮に銃刀法違反であっても、相手の作業工具との比較では、どちらも「武器」であることに違いない。
正当防衛と過剰防衛の線引きは難しい。正当防衛は、急迫不正の侵害に対する必要最小限の防衛行為に認められている。身を護るためにやむを得ずにした行為であり、通常なら犯罪であったも罰せられない。逃げる余地があって反撃した場合にも適用される。
よく例に出されるケースとして「西船橋駅事件」がある。ホームで酔っぱらいの男に絡まれている女性に、周辺の乗客が手助けしなかったために、女性が男を突き放した。その弾みに男は線路上に落ち、電車に轢かれて死んでしまった。女性は正当防衛が認められ無罪となった。
通常、防衛目的だけで反撃するのは困難だ。牛刀事件の場合、作業工具で襲って来た相手に対し、警官ならピストルを抜いたであろう。至近距離なら威嚇する余裕はない。撃っても殺しても警官の罪は問われない可能性が強い。一般人なら重罪となる。
相手が刃物を持って襲いかかり、これに対し素手で対応。相手を突き飛ばして打ち所が悪く、死んでしまった場合、恐らく正当防衛となるだろう。この逆なら過剰防衛か殺人罪だ。相手は素手だが、複数で先に殴りかかって来たのに対し、一人で素手で対抗。結果として相手が死んだり、大怪我したケースでは、正当防衛が必ずしも成立するかどうかは微妙だ。
過去においてワガハイは、他人の乱闘に割り込み両者を引き離したことや、電車内で女性に嫌がらせをしていた酔っぱらいを制圧したことがある。ホームを汚していた男に注意したら、傘の先を突きつけて攻撃されたこともある。いずれも双方とも怪我はなかったが、一つ間違えば何が起こったかわからない。
乱闘場面で、相手に手加減を加えることは非常に難しい。特に身に危険が及ぶ場合は、瞬間的に捨身ワザを掛けることもあり得る。その場合、相手が死なないまでも大怪我する可能性は大だ。どこまでが正当防衛かを考えて対応するのは、現実的には無理である。実戦経験のない裁判官が、法の世界だけで判断するには限界がある。(06年6月「時代錯誤」、07年1月「名誉殺人」参照)
by everyoung
| 2009-11-14 11:46
| 言いたい放題
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