2015年 04月 11日
全体像が必要 |
統一地方選も、あす投票日を迎える。政党の中には、「原発ゼロ」を唱えて走り回っている候補者がいるが、どうやって実現するかについては、ほとんど触れていない。耳障りの良いムードだけが先行しているが、大事なのは具体策だ。
二酸化炭素による世界的な温室効果ガスの濃度は、どんどん上昇する傾向にある。二酸化炭素排出量が最も多いのは中国だが、日本も堂々5位の位置を占めている。しかも、東日本大震災以降、原発が停止しており、不足電力を補うためにポンコツ設備も動員。火力発電はフル回転の状態だ。
経産省の統計によると、日本の二酸化炭素の排出量は、原発停止前後比で1億トン以上も増えている。13年度は12億2400万トンと過去最高の水準に達している。原発が再稼働しない限りは、今後も増加傾向を続けることになる。
自民党の原子力政策需給問題等調査会は先に、「エネルギーミックス」に関する提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。2030年の「ベースロード電源」を6割とし、残りの4割を天然ガス火力、石油火力、水力を除く再生可能エネルギーで賄うというものだ。
「ベースロード電源」は、天候如何に関らず、いつでも一定量の安定電力が供給できる電源という位置づけだ。石炭火力と水力、地熱で全体の4割とし、原発は2割と見込んでいる。大震災前の原発依存度は28、8%だった。
エネルギー自給率は、大震災前は20%あったが、原発が止まったため4%まで急減した。今後の原発の再稼働を見込んでも、中国、英国、米国、インドなどの90%〜70%に比べると、恐ろしく低い水準と言わざるを得ない。
再生可能エネルギーへの依存度を高めることは重要だが、実態は遅々として進んでいない。現在の構成を見ると、化石燃料依存度が88%強に対し、再生可能エネルギーは11%にも満たない。
大震災前の再生可能エネルギーの比率は10%。ほとんどが水力で、これを除くとわずかに1%程度だった。その後、政府の後押しなどもあって12年度は1、6%、13年度は2、2%と微増しているが、依然として電力源としては取るに足らない存在だ。
期待の星として太陽光発電が挙げられるが、一戸建て全家庭に設置しても、必要電力の5%しか得られない。しかも、固定買取制度の拡大で電力料金の跳ね返りが大きく、施設利用率も低く、高コストだ。反射公害で訴訟問題も発生しており、将来もそう伸びないだろうと見られている。
むしろ、中小規模の水力発電の普及や地熱、バイオマスなどが増えていくのではないかとの予想がある。再生可能エネルギーの割合が上昇するには、技術面やコスト面での飛躍が不可欠で、相当時間が掛かる。
ワガハイが気になるのは、石炭火力による二酸化炭素の排出だ。天候異変や環境悪化だけではない。世界で毎年、26万人もの人が呼吸器障害で命を落としている。原油の国際価格の下落で、多少の恩恵を受けているが、電力料金の値上げによる家計への直撃も深刻だ。
「原発ゼロ」は、好ましいことではあるが、すぐにはできない。安全を確かめて再稼働を進め、順次、脱原発を目指すしかない。バカの一つ覚えで「原発ゼロ」を闇雲に喚くなら、エネルギー問題をどう解決するかの答えも用意しておくべきだ。
by everyoung
| 2015-04-11 22:28
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