2017年 03月 11日
賢明な決断 |
政府は、昨日開いた国家安全保障会議(NSC)で、南スーダンに派遣している国連平和維持活動(PKO)の部隊を5月末までに撤収する方針を決めた。まだ先のことなので、それまでに自衛隊員に被害者が出るかどうかはわからないが、早めの決断は評価したい。
安倍晋三首相は、会議後記者団に撤収の理由について、①南スーダンの国造りが新たな段階に入った②活動期間が5年を超え、施設整備に一定の区切りを付けることができた③国連派遣団司令部への派遣は継続する④国連や南スーダン、関係国には事前の了解を得たーなどと説明した。
自衛隊員のPKO活動は、目下、南スーダンだけで展開されている。民主党政権下で派遣が決まった経緯がある。活動拠点の首都ジュバでは昨年夏、大規模な武力衝突が発生。多くの死傷者が出るなど、治安の悪化が指摘されていた。
政府は、新たな安全保障関連法の基で、国連の要請があれば別の場所で襲撃された他国のPKOなどに対しても、要員保護のため「駆けつけ警護」ができる新任務を付与。そのための訓練を受けた交代部隊を派遣したばかりだ。
菅義偉官房長官は記者会見で、撤収は「治安の悪化が理由ではない。ジュバの情勢は落ち着いている」と説明。任務の履行内容を中心に判断したとの考えを示した。政府としても、表向きは「治安悪化」を理由にはしていないが、撤収のタイミングを見計らっていたことは間違いない。
南スーダン問題は、安保関連法との関係で、先の国会で与野党が論戦を繰り返したテーマだ。野党は「PKO派遣5原則」が崩れているとして、派遣に激しく抵抗していた。今回の政府の決断に対しても野党は、「それ見たことか」と一斉に政府の判断ミスを追及する構えを見せている。
日本が、他国の復興再建や平和維持に積極的に関与することには反対ではない。中東での過去の経験から、「ゼニだけ出して、人的協力はできない」では、世界の世論から反発を受けるのは必至だ。とは言っても日本ができることには、憲法との関係で限界があることも事実だ。どこまで折り合えるかが課題だ。
内戦の程度にもよるが、まともに戦闘もできない条件で自衛隊員が派遣され、訳のわからない国の内戦に巻き込まれることは極めて危険である。自衛隊員が手足を縛られたまま、命を賭すのは愚かなことだ。これを機に、与野党とも今後のPKOへの参加のあり方を議論し直した方がよい。
(16年9月「深入りするな」など参照)
by everyoung
| 2017-03-11 10:07
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