2017年 03月 21日
大局観に欠ける |
ドイツで開かれていた主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を採択して終了した。トランプ米政権として初めての会議だったが、全体として米国に押し切られた結果となった。
通貨問題については、「切り下げや目標を競争力強化に用いない」とする従来の表現を踏襲したが、通商関連では、米国が「公正な貿易」を主張して譲らず、「保護主義に対抗する」という前回の文言は削除された。
地球温暖化問題でも、米国が対策を促進する文言を外すことを求め、声明には盛り込まれなかった。オバマ政権下では、新たな枠組みとしての「パリ協定」への参加について、中国とともに漸く積極的に取組む姿勢を見せていた。米国のムニューシン財務長官は、温暖化対策は首脳会議で協議するテーマだとして、場違いであることを説明した。
5月には、主要7カ国(G7)が開催。7月にはG20の首脳会議が予定されているが、温暖化対策では、トランプ政権は引き続き消極姿勢を示すものと見られる。通商問題は、一方的に保護主義を米国が主張しても、いずれ我が身に降り掛かる問題であることに気付くであろうが、温暖化は目に見えない形で進行。手遅れになる可能性が大だ。
直近データによると、温暖化の主要因である二酸化炭素(CO2)の排出量は、中国がダントツで、年間92億トン。2位が米国で同55億トン、3位インド(同22億トン)、4位ロシア(同15億トン)と続き、日本は5位で12億トンを吐き出している。
世界保健機構(WHO)の統計によると、世界全体で大気汚染による死者は年間700万人に達している。別の統計や調査でも似たような数値が出ている。約半数が自動車によるもので、3割程度が火力発電が原因だ。火力発電による死者は、原子力発電の700倍程度だと推定されている。
CO2の排出量が多い国の死亡率が高いのは当然だが、東南アジアのエネルギー需要の増大に伴い、同地域での犠牲者が急激に増えている傾向にある。温暖化による影響は、すでにあちことに顕著になっているのが現実だ。
これまでも何度か指摘(10年1月「寒波の冬」、15年11月「茹でガエル現象」など参照)したが、温暖化は人類の直面した差し迫った危機で、早めの対策が不可欠であることは言うまでもない。
中国の孔子の弟子であった荀子の言葉に「着眼大局 着手小局」というのがある。モノゴトはまず、広い視野から捉え、戦略を練ることが大事だ。その上で、足下の一つ一つの案件を具体化していくことが必要だという意味だ。
温暖化問題に限らず、トランプ政権には「大局観」がないように見受けられる。「世界のリーダー」としての自覚はまるでなく、政策はそこらの「小国」程度の発想だ。目先の利益だけに捕われていると、後でしっぺ返しを食らい、後悔することになるだろう。
by everyoung
| 2017-03-21 10:54
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