2017年 04月 22日
トップの資質 |
日立製作所、三菱電機とともに、日本の「総合電機メーカー」3社の一角を占める東芝の命運が怪しげだ。これだけの大組織ともなると資産も多く、そう簡単に潰れることはないだろうが、相当な改革は避けられない。
東芝は、前進の芝浦製作所としてスタートしたのは1904年だ。代々の社長は財界などに深く関与。日本の経済をリードする役割を担って来た。特に石坂泰三氏や土光敏夫氏の活躍は印象に残る。
ワガハイが、東芝と仕事上で付き合いがあったのは佐波正一氏の時代だ。今、非難の矢面にされている西室泰三氏については個人的には接点がない。西室氏は、東芝の改革に尽力した面もあるが、現役を退任してからも「院政」を敷くなど、内部での評判は芳しくなかった。
特に東芝の経営がおかしくなったのは、粉飾決算の発覚からだ。それに絡んで3人の元社長が失脚を余儀なくなれたが、それ以前に社長を務めた西室氏ら4人の元社長は、当時「権限のない役員」であったことを理由に罪を免れた。
西室氏が社長に就任したのは1996年のことだ。2006年には、米原発大手のウェスチングハウスを6600億円を投じて買収した。裏で、知人を介して米議会にロビー活動を展開。社内での反対を押し切って独断で決めた経緯がある。
ウェスチングハウスは、思惑が外れて7000億円もの巨額の損失を計上。その穴埋めに、「虎の子」の半導体部門を分社化して売却するなど、後処理に追われている。西室時代の東芝は、利益が下降を続け、経営能力に疑問も呈されている。
2005年には東京証券取引所の会長にも就いたが、ジェイコム株の誤発注やライブドア事件に関与。東芝当時の「粉飾関係者」が、公職を務めること自体に世間から疑義が持たれていた。
何が評価されたのか知らないが、西室氏は2013年に日本郵政の社長に抜擢され、一時傘下のゆうちょ銀行のトップも兼務した。注目を浴びている豪州の物流大手トール・ホールディングを6200億円で買収したのは2015年のことだ。
同社のブランド力とノウハウを期待したものと見られていた。当初から、内部では反対意見も強かったが、西室氏が強硬に断を下した。本人は体調不良を理由にすでに現役を退いているが、ウェスチングハウス同様に巨額な「負の資産」を撒き散らしただけに終わった。
郵政は民営化されたとはいえ、株式の大半は政府が保有しているのが現状だ。トールの損失が明らかになって、郵政株は下落。保有株の売却では、大幅な収入減が予想される。単なる民間企業の経営問題では済まされない。
ワガハイは、西室氏の経営手腕を当初から全く評価していない。これだけの損失に関わると、トップの責任が如何に大きいかを物語っている。日本の企業は、どちらかと言えば、ボトムアップで物事を決める仕組みだ。これには一長一短がある。
たまたま、強引な社長が出現してトプダウンを強行する。うまくいけば良いが、下手をすると命取りになる。西室氏の過去は、それを裏付けている。東芝は、「下克上」が許されない体質だったようだ。今になって後悔しているであろう。
by everyoung
| 2017-04-22 10:24
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