2013年 04月 09日
巨星また墜ちる |
「鉄の女」として英国の歴史に名を残したマーガレット・サッチャー元首相が死去した。前任のキャラハン元首相も長命であったが、彼女も波乱含みの87年の長い生涯であった。晩年は、脳卒中で倒れて政界を引退した後、認知症を患っていたと伝えられていた。
ワガハイは英国に5年余駐在したが、当時、ヒース政権下でサッチャー氏は一閣僚に過ぎなかった。日本と同様に、男性閣僚の中で彩りを添える程度の存在だったが、保守党の論客として鼻息は荒かったような印象を持っている。
サッチャー氏は、中部イングランドの雑貨屋の娘として生まれた。オックスフォード大に進んだあたりから政治に目覚め、頭角を現したようだ。英国のエリートは、イートン校やハロー校といったパブリックスクールを出ていることが条件だ。英国の社会常識では、サッチャー氏はエリートの範疇にはない。
もともとパブリクスクールは、金持ちのぼっちゃん校であったから、サッチャー氏にはその資格はなかっただろうが、同時代のウイルソン、ヒース、キャラハン元首相らもパブリック出でではない。エリート層からすれば、いずれも「成り上がり者」の政治屋である。
その一人であるサッチャー氏が天下を取ったのは1979年だ。「英国病」が蔓延。経済も社会も疲弊し、抜き差しならぬ状況にあった。以降11年余政権を率い、英国のシステムを大きく変えた。功罪については相半ばするものがあるが、自らの政治信念を貫き、強烈な指導力を発揮したことは評価に値する。
求めたものは「強い英国」である。そのために、「小さな政府」を志向し「競争原理」を導入した。自由を標榜し、自助努力や自己責任を促した。民営化や規制緩和を思い切って断行。労組への妥協も示さなかった。「サッチャリズム」と呼ばれ、半面、格差の拡大など数々の摩擦も引き起こした。
外交面では、旧ソ連へ強硬姿勢で臨み、結果として冷戦構造の集結を導いた。欧州統合にも参加せず、独自の路線を突っ走った。アルゼンチンとのフォークランド紛争では、政界内部の反対を押切り勝利を収めた。保守党の中でもタカ派の象徴的存在であったが、政治信念は曲げなかった。
どこかの国の政党のように、世間の風向きを見てコロコロ方針を変えたり、国民に耳障りの良いことだけを並べ立てて人気を取ったり、できもしないことを約束するようなことはしなかった。同時代に政権にあった米国のレーガン元大統領、日本の中曽根康弘元首相、旧ソ連のゴルバチョフ元首相らに大きな影響を与えたと言われている。巨星がまた一つ墜ちたということだ。(12年8月「ハマコー逝く」参照)
ワガハイは英国に5年余駐在したが、当時、ヒース政権下でサッチャー氏は一閣僚に過ぎなかった。日本と同様に、男性閣僚の中で彩りを添える程度の存在だったが、保守党の論客として鼻息は荒かったような印象を持っている。
サッチャー氏は、中部イングランドの雑貨屋の娘として生まれた。オックスフォード大に進んだあたりから政治に目覚め、頭角を現したようだ。英国のエリートは、イートン校やハロー校といったパブリックスクールを出ていることが条件だ。英国の社会常識では、サッチャー氏はエリートの範疇にはない。
もともとパブリクスクールは、金持ちのぼっちゃん校であったから、サッチャー氏にはその資格はなかっただろうが、同時代のウイルソン、ヒース、キャラハン元首相らもパブリック出でではない。エリート層からすれば、いずれも「成り上がり者」の政治屋である。
その一人であるサッチャー氏が天下を取ったのは1979年だ。「英国病」が蔓延。経済も社会も疲弊し、抜き差しならぬ状況にあった。以降11年余政権を率い、英国のシステムを大きく変えた。功罪については相半ばするものがあるが、自らの政治信念を貫き、強烈な指導力を発揮したことは評価に値する。
求めたものは「強い英国」である。そのために、「小さな政府」を志向し「競争原理」を導入した。自由を標榜し、自助努力や自己責任を促した。民営化や規制緩和を思い切って断行。労組への妥協も示さなかった。「サッチャリズム」と呼ばれ、半面、格差の拡大など数々の摩擦も引き起こした。
外交面では、旧ソ連へ強硬姿勢で臨み、結果として冷戦構造の集結を導いた。欧州統合にも参加せず、独自の路線を突っ走った。アルゼンチンとのフォークランド紛争では、政界内部の反対を押切り勝利を収めた。保守党の中でもタカ派の象徴的存在であったが、政治信念は曲げなかった。
どこかの国の政党のように、世間の風向きを見てコロコロ方針を変えたり、国民に耳障りの良いことだけを並べ立てて人気を取ったり、できもしないことを約束するようなことはしなかった。同時代に政権にあった米国のレーガン元大統領、日本の中曽根康弘元首相、旧ソ連のゴルバチョフ元首相らに大きな影響を与えたと言われている。巨星がまた一つ墜ちたということだ。(12年8月「ハマコー逝く」参照)
by everyoung
| 2013-04-09 09:42
| 言いたい放題
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