2015年 07月 06日
居直るだけでは |
欧州連合(EC)の財政緊縮策を受け入れるかどうかを巡ったギリシャの国民投票の結果は、「NO」が6割以上を占めた。反対派のチプラス首相は、これに勢いを得てEC側との交渉に臨む方針だが、共通通貨ユーロから離脱の可能性も出て来た。
ギリシャの財政危機が表面化したのは2009年末頃だ。欧州委員会が統計上の不備を指摘。「粉飾決算」が明らかになった。国民の半分が公務員という「大きな政府」で、過大な社会保障給付や人件費の高騰が問題視された。脱税や汚職も日常茶飯事で、財政の放漫運営が続いていた。
EUや国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)は、これまでに30兆円を上回る融資を実行。ユーロ債権の減免措置なども講じて来た。その見返りに、公務員数の大幅削減や社会保障費のカット、構造改革など緊縮策を求めていた。
チプラス首相は、EU側の緊縮要請に対し、国民に窮乏生活を強いるものだとし、「脅しだ」「テロだ」「占領策だ」などと反発姿勢を強めている。現実には、EU側の支援なしでは、ギリシャ経済はすでに立ち行かない状況に追い込まれている。
EU加盟国は、現在28カ国に達している。1999年から11カ国で共通通貨としてユーロを導入。ギリシャも2001年から加わっている。今ではユーロ通貨圏は19カ国に上っている。
仮にギリシャが離脱すれば、同じような財政危機に直面しているスペインやポルトガルなどにも飛び火しかねないとの懸念もある。ドイツやフランスなどを中心に今後を対応策を協議することになるが、そう簡単にEU側が譲歩することにはならないだろう。
昔、何度かギリシャを訪れたことがある。特にペロポネソス半島を、1週間バスで旅したのは想い出深い。全体に土地は痩せており、オリーブの樹が印象的だった。主に海運と観光で成り立っている国で、目立った産業はない。気候も温暖で国民は一般に楽天的だ。
その所為かはわからないが、国民は国家の台所事情などにはあまり関心がない。個人の生活を重視する国民性だ。個人でも企業でも国でも、借りたカネはいつか返さなければならない。自転車操業的にカネが回転していれば倒れることはないが、いったん行き詰まると、忽ち破綻する運命にある。
日本も巨額の財政赤字を抱えているが、国民の総資産は国の赤字分の10倍近くもある。しかも世界最大の対外債権国だ。米国も大幅な財政赤字にあるが、借金しても国力や信用力があれば破綻することはない。ギリシャとは根本的に背景が異なる。
カネや平和は天から降って来るものではない。汗水垂らして得るものだ。チプラス首相は、ドイツに対し戦時中の賠償として20兆円近い請求権をちらつかせているとの説もあるが、筋違いの要求だ。居直るだけでは前進はしない。
by everyoung
| 2015-07-06 20:24
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