2015年 07月 09日
昨日の敵 |
ベトナムの共産党政権のトップであるグエン・フー・チョン書記長が米国を初めて訪問。オバマ大統領と握手した。時代も変わったものだ。南シナ海を巡った対中国戦略で双方の思惑が一致。かつての敵が味方に変身したと言える。
中国の南シナ海での岩礁埋め立てについて双方が、「地域の安全、安定を脅かすもの」として、暗に中国の行動を非難した。ベトナム戦後は、同国での共産党一党独裁が続き、軍事的にはロシア、経済的には中国との繋がりが強い。
それでも対米接近に傾いたのは、過去の中国との関係だ。ベトナム戦では、背後から旧ソ連や中国からの援助を受けたが、その後の中国の海洋進出で、西沙や南沙諸島の一部を奪われた経緯がある。長年の「中国支配」の影響も加わって、国民の間では反中国の動きが目立って来ている。
共産主義と民主主義は相対立する関係にある。政治体制は異なるものの、米国にとっても対中国アジア戦略の面から、ベトナムに楔を打っておくことが必要だ。軍事同盟までは行かないまでも、機に乗じて関係を強化することが得策と判断したものだ。
日本との関わりはどうか。「チャイナプラスワン」として、日本企業のベトナム進出が続いている。タイやインドネシア、フィリピンなどと同様に、安価な労働力や市場を求めて製造業などが拠点の構築を急いでいる。
ワガハイの親族のひとりも現地工場で働いている。もともとタイに駐在していたが、ベトナムへの業務拡大とともに異動した。居心地が良く、帰国する気がしないそうだ。ベトナム人は、性格的に日本人と共有するものがあり、親しみのある国民性だ。
会社の先輩だったAさんは、旧サイゴン駐在時代に現地婦人と知り合い結婚した。婦人は二人の子持ちの再婚で、Aさんはいきなり父親になった。その後、家族を連れて中東に勤務したが、ベトナム戦の終結で家族の母国がなくなり、ビザなどの面で相当苦労した。現在は米国に定住している。
旧日本軍は、戦中にアジアに進出。ベトナムからフランスを追い出した。戦後一時フランスが影響力を盛り返す場面があったが、結局撤退。替わって米国が介入した。その米国も敗北して現在のベトナムとなった。
戦力で圧倒的な優位を占めていた米軍をあれほど苦しめたのは、現地のゲリラ勢力だ。これを背後で指導していたのが、旧日本陸軍中野学校の現地残留組だと言われている。インドネシアでもそうだが、第二次大戦後も多くの日本兵が現地に残り、かっての敵国と戦い、様々な形で独立を支援した。
グエン政権が、米国への接近を強めたからといって、即、民主主義国家に変わることは難しい。体制は同じでも、現実には中国や北朝鮮などとは異なり、経済や社会面などでは違和感のない国だ。一気には無理としても、順次、「普通の国」になることを期待したい。
by everyoung
| 2015-07-09 10:18
| 言いたい放題
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