2015年 11月 22日
茹でガエル現象 |
経済協力開発機構(OECD)の作業部会は先日、石炭火力発電について、高効率の最新型以外の輸出を制限することで合意した。規制対象をなるのは、効率の低い「超臨界」「亜臨界」と呼ばれる型のもの。今後は、政府系金融機関などの公的支援が、途上国向けの一部を除いてできなくなる。
石炭火力発電は、安倍晋三政権では原発などと同様に「ベースロード電源」と位置づけられている。日本では、発電の化石燃料依存度が極端に高いのが現状だ。石炭は、天然ガスの約2倍、石油の1、5倍もの二酸化炭素を吐き出し、地球温暖化の主な原因と言われている。原発では大騒ぎする割には、石炭に対する世論の反応は鈍い。OECDの決断は遅きに失する感がある。
地球温暖化は、太陽系のサイクルによる「氷期」と「間氷期」で、過去にも大きな変動があった。海面の上昇や低下が、数十メートルもあったという記録もある。二酸化炭素は、それを加速する要因になっていると見られている。
温暖化白書によると、グリーンランドの雪の堆積面積が、ここ数年で20%近くも減少。この百年間で、海面が17センチ上昇した。今後2080年までに40センチ上昇すると仮定すれば、被害人口は全世界で2億人にも達するとの見方もある。
海面の上昇は、雪や氷が融けるだけでなく、温度上昇による海水の熱膨張などが要因であるとされる。日本の場合、海面1メートルの上昇で、水没面積は2300平方キロに及び、400万人以上が影響。砂浜の90%がなくなり、生態系にも大きなダメージが生じる可能性がある。
1メートルの海面上昇を防止するには、港湾施設のかさ上げだけでも8兆円近い費用が掛かる。海岸の護岸工事でも11兆円を上回るとの試算もあり、カネがいくらあっても足りないほどだ。仮に海岸を防護しても、完璧に水没地域をなくすのは困難だ。
世界で最初に沈没する国は、南太平洋のツバルだとの説がある。珊瑚礁の島で、海面上昇をモロに受け易い。デルタ地帯の多いバングラディッシュや、「水の都」として知られるベネチアなども、哀れな運命が待ち構えている。
ビジネスの世界では時々、「茹でガエル現象」というのが話題になる。カエルを、いきなり熱湯に入れると、びっくりして飛び出すために助かる。水に入れて徐々に温めると、カエルは気付かぬままに茹で上がり死んでしまう。危機が迫っていることに鈍感過ぎると、命取りになるという警告だ。
原発事故などが発生すると、世間は大騒ぎして「安全」を叫びまくる。過剰なまでに防衛措置を講じるために、再び同じようなことは起こりにくい。半面、二酸化炭素は、知らぬ間に社会は自然の中に浸透。気付いた時には大変なことになっている。今月末に開かれる予定の国連気象変動会議(COP21)では、危機感が関係国でどれだけ共有できるかが課題だ。
(15年4月「全体像が必要」、同「深刻な事態」、同6月「どっちが危険」など参照)
石炭火力発電は、安倍晋三政権では原発などと同様に「ベースロード電源」と位置づけられている。日本では、発電の化石燃料依存度が極端に高いのが現状だ。石炭は、天然ガスの約2倍、石油の1、5倍もの二酸化炭素を吐き出し、地球温暖化の主な原因と言われている。原発では大騒ぎする割には、石炭に対する世論の反応は鈍い。OECDの決断は遅きに失する感がある。
地球温暖化は、太陽系のサイクルによる「氷期」と「間氷期」で、過去にも大きな変動があった。海面の上昇や低下が、数十メートルもあったという記録もある。二酸化炭素は、それを加速する要因になっていると見られている。
温暖化白書によると、グリーンランドの雪の堆積面積が、ここ数年で20%近くも減少。この百年間で、海面が17センチ上昇した。今後2080年までに40センチ上昇すると仮定すれば、被害人口は全世界で2億人にも達するとの見方もある。
海面の上昇は、雪や氷が融けるだけでなく、温度上昇による海水の熱膨張などが要因であるとされる。日本の場合、海面1メートルの上昇で、水没面積は2300平方キロに及び、400万人以上が影響。砂浜の90%がなくなり、生態系にも大きなダメージが生じる可能性がある。
1メートルの海面上昇を防止するには、港湾施設のかさ上げだけでも8兆円近い費用が掛かる。海岸の護岸工事でも11兆円を上回るとの試算もあり、カネがいくらあっても足りないほどだ。仮に海岸を防護しても、完璧に水没地域をなくすのは困難だ。
世界で最初に沈没する国は、南太平洋のツバルだとの説がある。珊瑚礁の島で、海面上昇をモロに受け易い。デルタ地帯の多いバングラディッシュや、「水の都」として知られるベネチアなども、哀れな運命が待ち構えている。
ビジネスの世界では時々、「茹でガエル現象」というのが話題になる。カエルを、いきなり熱湯に入れると、びっくりして飛び出すために助かる。水に入れて徐々に温めると、カエルは気付かぬままに茹で上がり死んでしまう。危機が迫っていることに鈍感過ぎると、命取りになるという警告だ。
原発事故などが発生すると、世間は大騒ぎして「安全」を叫びまくる。過剰なまでに防衛措置を講じるために、再び同じようなことは起こりにくい。半面、二酸化炭素は、知らぬ間に社会は自然の中に浸透。気付いた時には大変なことになっている。今月末に開かれる予定の国連気象変動会議(COP21)では、危機感が関係国でどれだけ共有できるかが課題だ。
(15年4月「全体像が必要」、同「深刻な事態」、同6月「どっちが危険」など参照)
by everyoung
| 2015-11-22 20:50
| 言いたい放題
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