2016年 05月 16日
同一労働の意味 |
東京地裁は先日、定年後に嘱託として再雇用された運送会社で働くトラック運転手3人に、定年前と同じ賃金を支払うように命じた。運転手は、「同じ仕事なのに給与を下げるのは不当」として訴えていた。原告の主張を認めた初のケースで、論議を呼びそうだ。
裁判長は、「業務内容や責任が同じなのに、賃金を下げるのは労働契約法に違反する」として、正社員のような無期雇用と、定年後の有期雇用で不合理な差別をつけてはいけない」と断じた。賃金が同じであることは分かり易いが、労働が同じという評価は一般的には難しい。
不合理かどうかの解釈も極めて曖昧だ。裁判長は一方で、「コストを抑制し、定年後の雇用確保のための賃下げには合理性がある」としながら、「賃下げ慣行は、社会通念上受け入れられている証拠はない」と述べ、賃下げを「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」との考えを示した。何を言っているのかよくわからない。
現行の高齢者雇用安定法によると、60歳で定年になった場合、「希望すれば、65歳まで雇用を継続しなければならない」と定めている。その場合、社員ではなく、パートか嘱託だ。パート労働法では、「仕事内容が同じなら、社員と給与に差を付けることはできない」となっている。
では、嘱託として再雇用した場合はどうか。高齢者雇用安定法では、定年時の労働条件を引き継ぐことを義務付けてはいない。新たな条件での雇用契約となり、定年前と同じ給与にする必要はない。当事者が署名捺印すれば契約は成立する。
大阪高裁でも、こうした考えに基ずく判決が出され、会社側が勝利した事例がある。もっとも、新たに結ぶ契約条件に、余りにも不合理生があれば、行政が指導したり、企業名を公表することになっている。今回のケースでは年収の2〜3割減で、社会通念上それほど違和感はない。
トラックを運転することだけに着目すれば、新入社員であろうがベテランであろうが、技量にそれほどの差はないものと推定される。件の運送会社が普通の企業なら、同じ仕事であっても、年功序列で正社員間にも年収差が生じているはずだ。定年前後の比較どころか、現役時代でも「同一労働同一賃金」にはなっていないということだ。
日本の社会制度は欧米とは異なる。「同一労働」には「同一賃金」というのは単純明快だが、部分的にこの考えを適用すると、全体の雇用構造がおかしくなる。年功序列だけでなく、終身雇用制度や社会保障制度、労働関係法など全面的に見直す必要がある。単に司法の問題ではない。
裁判長は、「業務内容や責任が同じなのに、賃金を下げるのは労働契約法に違反する」として、正社員のような無期雇用と、定年後の有期雇用で不合理な差別をつけてはいけない」と断じた。賃金が同じであることは分かり易いが、労働が同じという評価は一般的には難しい。
不合理かどうかの解釈も極めて曖昧だ。裁判長は一方で、「コストを抑制し、定年後の雇用確保のための賃下げには合理性がある」としながら、「賃下げ慣行は、社会通念上受け入れられている証拠はない」と述べ、賃下げを「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」との考えを示した。何を言っているのかよくわからない。
現行の高齢者雇用安定法によると、60歳で定年になった場合、「希望すれば、65歳まで雇用を継続しなければならない」と定めている。その場合、社員ではなく、パートか嘱託だ。パート労働法では、「仕事内容が同じなら、社員と給与に差を付けることはできない」となっている。
では、嘱託として再雇用した場合はどうか。高齢者雇用安定法では、定年時の労働条件を引き継ぐことを義務付けてはいない。新たな条件での雇用契約となり、定年前と同じ給与にする必要はない。当事者が署名捺印すれば契約は成立する。
大阪高裁でも、こうした考えに基ずく判決が出され、会社側が勝利した事例がある。もっとも、新たに結ぶ契約条件に、余りにも不合理生があれば、行政が指導したり、企業名を公表することになっている。今回のケースでは年収の2〜3割減で、社会通念上それほど違和感はない。
トラックを運転することだけに着目すれば、新入社員であろうがベテランであろうが、技量にそれほどの差はないものと推定される。件の運送会社が普通の企業なら、同じ仕事であっても、年功序列で正社員間にも年収差が生じているはずだ。定年前後の比較どころか、現役時代でも「同一労働同一賃金」にはなっていないということだ。
日本の社会制度は欧米とは異なる。「同一労働」には「同一賃金」というのは単純明快だが、部分的にこの考えを適用すると、全体の雇用構造がおかしくなる。年功序列だけでなく、終身雇用制度や社会保障制度、労働関係法など全面的に見直す必要がある。単に司法の問題ではない。
by everyoung
| 2016-05-16 19:55
| 言いたい放題
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