2017年 02月 13日
適切な間合い |
安倍晋三首相とトランプ米大統領の首脳会談は、双方とも「蜜月関係」を強調することに終始、面倒なテーマは後回しにすることで一致した。安倍首相は異例の待遇を得て、気分良く帰国の途に就いた。日本側としては、会談はひとまず成功したと言えよう。
安全保障面では、先に訪日したマティス国防長官が「露払い的」な役目をしており、首脳会談ではこれをなぞった形で、確認するに留まった。注目された為替や通商問題については深入りせず、麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領による「日米経済対話」に委ねることになった。
世界的には関心の高い、米国の入国、難民政策に関しては首脳会談では話題にならず、安倍首相は、「内政問題なのでコメントと差し控えたい」と述べるに留めた。関係国にとっては、微妙な問題が絡むが、今の段階で特に日本の首相が持ち出すテーマではない。余計なことは言わない方が賢明である。
首脳会談では、お互いにこやかに「よいしょ」し合ったが、トランプ政権が日本の立場を理解したと見るのは早計だ。特に経済問題では、「自由で公正な貿易ルールに基づき、関係を強化する」とし、「経済対話」の枠組みが新設された。これを受けて今後、実務者レベルでの丁々発止の交渉が始まる見通しだ。
「経済対話」では、為替、通商政策をはじめインフラ投資など幅広い分野での協力のあり方などを具体的に協議することになる。米国の貿易赤字相手国は、ずば抜けて中国がダントツだが、日本はドイツとほぼ同水準の2番手に位置する。米国が、手を変え品を変え日本側に是正を迫って来るのは目に見えている。
武術や武道で大事なのは相手との間合いである。自分に有利なポジションをどうつくるかで勝負が決まる。難しいのは、相手も同じことを考えているということだ。距離感を誤り、詰め過ぎると危険で、そのタイミングが重要である。
これまでの言動を見る限り、トランプ氏は間合いの取り方が下手である。入国問題などはいい例で、いきなり危険ゾーンに入り込んでいる。他の大統領令についても同様だ。危険を察知したらいったん「ホームポジション」に戻ることだ。
日本にとって幸いなのは、「経済対話」の相手がペンス副大統領になったことだ。ペンス氏は親日家として知られ、トランプ政権内でも良識派に属する。日本としては与し易い相手だが、油断はならない。
トランプ氏と異なり、ペンス氏の間合いの取り方は優れていそうだ。日本側としてはうまく間合いを詰めて「先の先」を取ることを心掛けるべきだ。そのためには、対米投資や雇用の増大などの「アメ」を散らつかせて、有利はポジションに誘導することだ。麻生氏の手腕が問われる。
by everyoung
| 2017-02-13 12:51
| 言いたい放題
|
Comments(0)