2017年 03月 01日
比較的穏当 |
トランプ米大統領は、議会で初めての施政方針演説をし、「米国第一主義」を改めて強調した。内容は、全体として事前に報道された範囲内で、これまでの過激発言は引っ込み、比較的穏当であった。世論も概ね好意的に受け止めている。
注目されたのは、軍事費の拡大だ。「強いアメリカ」を意識したもので、約1割に当たる540億ドル(6兆円)を積みますことにした。中国の海洋進出やイスラム国(IS)、北朝鮮の相次ぐ暴挙などに対応することが狙いだ。
軍事費は米国がダントツだが、民主党政権下で縮小傾向に転じ、今年度ではピーク時に比べ約2割も減っている。共和党は、従来から軍事費の増強を訴えており、トランプ大統領も選挙中から増額を公約していた。
米国の軍事費の増額分だけを見ても、英国やドイツ、日本の年間防衛費にほぼ匹敵する規模で、予算の手当が大きな課題だ。トランプ大統領としては、他の予算を見直して捻出する考えだが、1兆ドルのインフラ投資や大幅な減税措置も併せて検討しており、議会で思惑通りに承認される保障はない。
大統領にとって最大の「敵」は議会だ。たまたま現在の議会は、上院、下院とも与党の共和党が過半数を握っている。本来なら、政権の意向を受けて賛同してもおかしくはないが、共和党内部が依然として割れており、下手をすると内部分裂しかねない。今後、大統領にとっては議会工作が頭の痛い「仕事」になるだろう。
日本にとって関心のあるのは、通商関係だ。就任早々、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明。施政方針演説でも、「成果」の一つとして挙げ、相変わらず保護主義を正当化する動きを示している。
安倍晋三首相は、TPPは今後の経済連携協定のモデルであるとして、自由貿易の推進に全力を挙げる考えで、米国とは緊密な連携を取っていく方針を明らかにしている。米国の雇用創出に協力する姿勢を示しながら、どこまで自由貿易の枠組みが守れるかがこれからの試練だ。
今回の施政方針演説では、従来の独善的な「トランプ節」がややトーンダウン。国内の融和を強調したのが注目された。トランプ大統領は、「ささいな闘いは終わった」と述べ、「協力と信頼の橋を架け、夢を分かち合う勇気」が大事だと表明した。
これまでも何度か指摘したが、トランプ流の考え方には事実誤認に基ずくものが多い。今の世の中は、自己中心だけでは回っていかないことを認識すべきだ。トランプ大統領が、振り上げた拳の降ろしどころを間違えると相当な混乱を呼ぶ。そろそろ「ハネムーン」も終わる時期だ。もう少し頭を冷やした方がよい。
(06年7月「三つの手紙」など参照)
by everyoung
| 2017-03-01 22:16
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