2018年 05月 10日
腹に一物 |
日中韓3カ国首脳会議が久しぶりに東京で開かれた。首脳同士が直接会って話し合うのはいいことだ。会談では、北朝鮮や北東アジアの平和と安定、繁栄などに力点がおかれ、多少の温度差はあったものの、概ね課題が共有できたことは喜ばしい。
重要な点は、共同声明の文言や、首脳の考え方ではない。何をやるか、どういう成果を実際に得るかだ。トランプ米大統領は、北朝鮮に拘束されていた米国人3人の解放を実現した。長年の懸案であり、北朝鮮問題解決への1歩前進であろう。
3カ国首脳会議と併行して、北朝鮮を巡った米朝の動きも慌ただしい。現時点では、初の米朝首脳会談の時期や場所は決まったようだが、公表されていない。双方の水面下の駆け引きが依然続いている模様だ。
新たに就任したポンペイオ米国務長官は、再び北朝鮮を訪問。キムジョンウン労働党委員長と会談した。内容は明らかにされていないが、キムに改めて米国の基本的な考え方を述べ、キムの譲歩を迫ったものと見られる。
北朝鮮の非核化については、中韓は、相変わらず対話路線を強調。日米とは一線を画した立場を堅持している。日米は、当初から「完全」「検証可能」「不可逆的」の3本柱を中心に非核化を求めている。これが実現できない限り、経済制裁で「最大限の圧力」をかけ続けるというスタンスに変わりはない。
巷間伝えられるところでは、米国は北朝鮮に「リビア方式」を迫るのではないかとの憶測がある。最初に核廃棄ありきで、それを見極めた上で制裁を解除する考え方だ。リビアはそれに応じたが、反政府勢力によって結局、カダフィ氏が殺されてしまった。
キムが、仮に「リビア方式」を受け入れることになっても、自らの命や体制維持を保証するものではない。場合によっては、カダフィ氏と同じ運命を辿ることになりかねない。このことが、キムの頭を過ぎったことは疑いない。
「南アフリカ方式」も、米国内で検討されているという説もある。「リビア方式」より、やや軟化したやり方だ。最終的に経済支援の付けが日本に回って来る可能性もあり、少なくとも日本としては、「南アフリカ方式」には賛同しない方が賢明だ。
短期間の内に、キムが再度中国を訪問、習近平に会ったのは、今後のキム体制の命運を、中国が担保できるかどうかを確認したのではないかと推測している。最近のキムの言動には、経済制裁の効果が出始め、社会混乱を招きかねない状況に追い込まれていることが如実に表れている。
トランプ大統領は、キムの置かれた状態をすでに見透かしており、カサにかけて圧力を強めることが予想される。対イランでの核合意離脱も、キムへの強烈なメッセージだ。1回の米朝会談で、全てが解決すると期待するのは無理だが、北朝鮮がこれを機に戦略転換して来ることは間違いないであろう。
by everyoung
| 2018-05-10 08:47
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