2018年 05月 15日
監視社会 |
新潟市の小学2年の女子生徒が、下校時に何者かに殺害されJRの線路上に遺棄された事件は、1週間で解決する見通しになった。遺体発見現場から少し離れた「道の駅」で、車に乗っていた男を警察が任意同行して逮捕。すでに関与を認める供述を始めているという。
男は、近所に住む23歳の会社員で、知人は、「温厚、誠実」で、残忍極まりない事件を起こすなどとは想像も付かなかったなどと述べている。始めから「凶悪犯人」である人はいない。人生のどこかで軌道を外れたであろう。
取り調べが進んで見ないと、事件の背景や疑問は解けないが、普通の人間の仕業ではない。会社員であるなら仕事をしているはずだ。勤務時間帯にもよるが、少女の下校時に待ち構えて犯行に及ぶのは、仕事をサボっていたのかも知れない。何らかの目的があったものと推定される。
事件現場は、住宅街の近くとはいえ、住民の目が行き届かない「盲点」も多い。警察は、聞き込みや目撃、「監視カメラ」、事件時間帯に通過した車の「ドライブレコーダー」などを総調べした模様だ。殺された時間帯が絞られており、重点的な捜査ができたメリットもあったが、警察の敏速な行動が早期の犯人特定に繋がったのは評価できる。
「白い車」がいたとか、「黒い車」だったとの目撃情報があったが、警察はかなり早い段階から目星を付け、犯人を暫く泳がせて、「道の駅」に追い込んだようだ。「警官を見たらドロボーと思え」などの風潮がある中で、警察の捜査力は十分に健在であることを示した。
今回の事件に限らないが、捜査の強力な味方は「監視カメラ」だ。実画像であるため、信用性は高い。聞き込み情報や目撃情報は、時に大いに役立つケースもあるが、当人の錯覚や思い込みもあって、当てにできないものも混じっている。
以前、ジョージオーウェルの小説「1984」を本欄でも紹介したことがある。「監視社会」の到来を予測したものだ。(05年5月「捜査協力」参照)。当局が、個人のプライバシーにまで立ち入り、一挙手一投足までチェックするという恐ろしい世界を描いている。
1984年はとっくに過ぎ去ったが、その後別の意味での「監視社会」が広がっている。人の行動を、いちいち他人に見られるのは愉快なことではないが、犯人の検挙には大いに「監視カメラ」が活躍している。
犯人が狙う対象は、女性や子どもなどの弱者だ。犯人と1対1で対抗するのはなかなか難しい。そこらで教えているような「護身術」などは実際には何の役にも立たない。最善の策は逃げることだが、状況によっては無理だ。
事後に犯人を特定するために「監視カメラ」を設置することは重要だが、それ以上に期待できるのは「抑止力」だ。事件が起こって犠牲者が出てから、犯人を素早く捉えても、犠牲者は元に戻らない。始めから事件が起こらないような環境をつくっておくことが大事だ。
子どもの登校は、始業時に合わせるので集団になる場合が一般的で、事件に巻き込まれるケースは少ない。問題は下校時だ。下校はまちまちになり、特に自宅近辺では一人になることもある。事件を教訓に、通学路への「監視カメラ」の設置を急ぐべきだ。
by everyoung
| 2018-05-15 09:42
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