2018年 05月 16日
内紛の兆し |
北朝鮮が、直前になって南北高官協議の中止を伝えてきた。米韓合同軍事演習「マックスサンダー」の実施を理由にしたものだが、これは表向きの口実に過ぎない。新聞各紙は、6月に予定される米朝首脳会談を睨んだ「揺さぶり」と分析しているが、揺さぶられているのはキムジョンウン労働党委員長の方だろう。
米韓合同軍事演習は、前から予定されたもので、新たな軍事挑発的なものではない。しかもキムは先に、「例年通りの水準で実施することに理解する」との考えを表明していた。核兵器搭載可能な「B52」戦略爆撃機の参加を問題視しているようだが、どちらでも関係ないことだ。
北朝鮮の外務次官は、「一方的な核放棄を強要しようとすれば、朝米首脳会談に応じるか再考する」との声明を発表。さらに、「流れに逆行した意図的な軍事挑発だ」と米国を激しく避難。「中止は南の責任である」とした。
韓国はこれに対し、「両首脳が合意し板門店宣言の精神に合致しない」とのコメントを表明した。「宣言」などを破るのは北朝鮮にとっていつものことで、「またか」との印象を強めただけだ。
南北協議の中止どころか、米朝会談も怪しくなってきたとの観測もあるが、北朝鮮が、急に和平ムードから強硬姿勢に転換したとは考えにくい。キムや周辺の言動とは関係なく、状況は、着実に追い込まれているのではないかと推測する。
キム自身は、すでに非核化は避けられないと覚悟。自らの命と体制の保証をどう担保するかに腐心しているのが実態であろう。キムにとって怖いのは、今や米国ではない。内部からの反乱だ。
米国に譲歩さえすれば、何とか生き延びる目処は立ったと判断しているのではないか。問題は、軍部や核開発に携わった科学者などからの反発だ。キムが、絶対的権力を持っているとはいえ、いつ足元が掬われるかも知れない恐怖心がある。独裁者には常にありがちなことだ。
軍部や科学者にとって、「丸裸」になることは面白かろうはずはない。キムも下手をすると彼らから命を狙われる運命にある。「無条件降伏」に対しては、内部への配慮から、一旦ポーズを示す必要があったであろう。中国に「ご機嫌伺い」しているのは、その辺の事情によるものと見られる。
米国にとっては失うものはない。中国の出方を見ながら、制裁で締め上げれば良いだけだ。何度も言うようだが、北朝鮮に対しては、「完全」「検証可能」「不可逆的」の3点セットが不可欠だ。後は、キムのメンツをどう保ってやるかだ。
by everyoung
| 2018-05-16 21:08
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