2018年 12月 09日
ドロボー国家 |
中国ハイテクトップ企業の幹部が、カナダで突然逮捕された。米国からの要請に基づくもので、いずれ米国への身柄の引き渡しとなるであろう。逮捕されたのは、華為技術の創業者の娘・孟晩舟で、現在同社の副会長(最高財務責任者)だ。
逮捕理由は、経済制裁を課しているイランとの抜け穴取引だとされる。米国は、「国防権限法」により、中興通訊に加えて華為技術からの米政府機関や取引企業への製品調達を禁止した。日本も、これに合わせて2社を政府調達から排除する方針である。
当然ながら中国当局は、はっきりした理由がないのに逮捕するのは「人権侵害」だと反発。カナダに対し、即時釈放を要求した。自国が世界有数の「人権侵害」国家であることをタナに上げて、人様の行動を非難する資格はないであろう。
背景には、中国の次世代の移動通訊技術である「5G」を巡った主導権争いがある。華為技術の創業者は、元人民解放軍出身の任正非で、軍との関係が強いとされる。同社は、10年で業績を6倍にも伸ばし、現在170カ国で事業展開。300社以上に製品を供給している。スマートフォンでの出荷台数は世界2位の地位を占めるに至っている。
一見、中国のハイテク企業が世界を席巻しているようだが、他人の物を無法に我が物にして来た「盗人商法」がベースになっている。官民上げてのスパイ活動は日常茶飯事で、知的財産権という認識もない。ハイテクで覇権を争う米国としては「堪忍袋の尾が切れた」と言ったところだ。対中貿易摩擦とワンセットの行動である。
華為技術の「イラン」や「5G」問題は、あくまでも口実のような気がする。重要な点は安全保障面での危機感であると推定される。思い出されるのは、日米間でのかつてのスーパーコンピュータを巡った論争だ。
当時の日本製スパコンは圧倒的な性能を有していたが、米国は1985年、国立大気研究センターへの納入をキャンセル。87年にはマサチュセッツ工大も同様な措置を取った。96年には「スーパー301条」を発動。NEC製のSX4に454%もの上乗せ関税を課し、事実上日本メーカーを締め出した。
日本製品に対し、競合関係にあるスパコン専業メーカーの米クレイ社からのダンピング容疑などが掛けられ、ロビー活動が奏功した。ダンピングなどは全くの言いがかりに過ぎないことは明白だが、米政府もそれに乗ったのは、国防上の理由があったと言われている。
同じ頃、「IBM産業スパイ事件」や、東芝機械の「ココム違反事件」などがあった。いずれも、安全保障政策が背後にあったとされる。同盟国の日本に対してさえ、コトが防衛上の問題となると米国の本気度が表に出る。ましてや価値観や体制が異なる中国となると、警戒心は格段に違う。米国とは、そういう国であることを念頭に置いてモノを見るべきだ。
by everyoung
| 2018-12-09 09:49
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