2019年 03月 06日
失速顕著に |
中国の全国人民代表大会(全人代)が北京で始まった。政府活動報告で李克強首相は、経済成長率の目標を昨年の6、5%前後から6−6、5%に引き下げ、「実体経済が多くの困難に直面している」ことを認めた。
日本では、経済統計のやり方を巡って国会での審議が続いている。役人が勝手にルール違反したのか、政治の関与があったのかどうかなどが焦点となっている。中国は、インチキ先進国で日本の比ではない。
以前にも本欄で取り上げたが、中国の統計数字は恣意的に操作されたものと理解すべきだ。信頼できるのは貿易統計ぐらいだ。理由は、相手国があり、いい加減な数字を羅列しても、すぐにバレてしまうからだ。
昨年の中国の国内総生産(GDP)もかなり怪しげだ。ことしの目標についても、一気に低い数字が出せないために幅を持たせたが、恐らく限りなく6%に近い数字となることが予想される。実態は、それよりは相当低い3%前後であろうというのが指揮者の見方だ。
習近平指導部にとって経済の悪化は深刻だ。対米通商摩擦などが影響していることもあるが、それ以前から共産党一党独裁政治の弊害があちこちに出始めている。経済破綻の一つの兆候は、民間企業のデフォルト(債務不履行)だ。
永泰能源に続いて年初には、民間投資会社の中国民生投資集団が、満期を迎えた社債の返還が滞り、デフォルトに陥った。不動産投資や再生エネルギー部門などでの投資失敗が原因とされている。
中国の債券市場では、一昨年頃からデフォルトが顕著になっている。ことしも、大量の社債償還期を迎える企業が多く、連鎖的に、民間企業の破綻が発生するのではないかと見られいる。
民間企業では、互いに債務を保証して資金を調達。これを元に成長して来た経緯がある。一旦、どこかで綻びが出て不良債権化すると、たちまち「共倒れ」となり、破綻の雪崩現象が起こる仕組みだ。
共産主義体制を維持しながら、資本主義の「いいとこ取り」をして急成長したが、所詮は「砂上の楼閣」に過ぎない。アリの一穴が、総崩れとなる危険性がある。指導部は、景気刺激策として、企業に対する減税や社会保険料の負担軽減、思いったインフラ投資などを打ち出している。
「入り」が減り、「出」が増えれば財政が悪化する。どこかで辻褄を合わせなければならないが、頼みの輸出は米国の出方次第だ。対抗同士がドンパチする時代ではない。一国を締め上げる現状での最善の方法は、経済で圧力を掛けることだ。米国の狙いは当を得ていると言える。
深刻な状況にも関わらず、中国の国防予算は膨張し続けている。ことしも前年比7、5%増の約20兆円に近い額を見込んでいる。まだ米国の4分の一だが、日本の4倍に相当する。
今のところ、成長率の鈍化や企業破綻にも関わらず、国防面までにはしわ寄せが及んでいない。経済の不調はいずれ社会不安となり、政権を脅かす可能性がある。国内の治安にも力を入れる必要があり、いずれ国防予算にも影響するであろう。中国にとって、ことしは正念場だ。
by everyoung
| 2019-03-06 10:37
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