2017年 05月 31日
目立つ存在感 |
イタリアのシシリー島タオルミナで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議は、何とか分裂の危機だけは避けられた。会議前からの首脳外交を展開して、G7の意義を説得して回った安倍晋三首相の尽力が高く評価されたと言っても過言ではない。
首脳宣言の内容と見ると、その努力の成果がよくわかる。注目の貿易問題では、「開かれた市場を堅持し、保護主義と闘う」とし、何とか米国が受け入れるように工夫した。温暖化に関する「パリ協定」では、「米国が政策を見直している途中であることを理解する」との現状認識に留め、各国も了承した。
難民・移民については、「アフリカの開発が難民対策に繋がる」として支援を強めることで一致。「緊急、長期のアプローチが必要」であることで合意した。英国や米国にも配慮して「国境の管理は、国家の主権的権利」との文言も盛り込んだ。
日本が特に重要視していた北朝鮮問題では、「新たな段階の脅威」と踏み込み、「安保理決議に従うよう」求め、各国の理解を得た。イスラム国家(IS)でも、「打倒への努力」の必要性を強調した。
ほとんどの局面で、トランプ米大統領が、「自国第一主義」を表に出して、他国の「国際協調」路線と対立した。就任して4ヶ月以上も経つのに、相変わらずわけのわからないことを述べまくり、コトあるごとに不協和音を奏でた。
これをなだめて、宣言に持ち込むことが出来たのは安倍首相の功績によるものだ。恐らく、宣言の結果を見て一番ホッとしたのはメルケル独首相ではなかったかと推定される。主催国のイタリアもメンツを保つことができた。
G7がバラバラになって喜ぶのはロシアと中国であろう。すでに欧州は一枚岩ではない。英国が欧州連合(EU)を離脱。フランスは、超過激派大統領の誕生は避けられたが、前途は多難だ。まとめ役のメルケル首相も内憂外患で難問山積だ。
それに米国の独善主義が加われば、経済はもちろん、安全保障面でも深刻な危機に直面する可能性が大だ。安倍首相は、それを察知して折り合いを付ける役割を買って出たと言える。
幸いにも、トランプ大統領と安倍首相は何度かの会談を通じて信頼関係が構築できている。推測に過ぎないが、安倍首相は、理屈を並べ立てて説得したのではない。トランプ大統領は、依然「ビジネスマン」で「政治家」にはなり切っていない。
その弱点を突き、G7の結束と国際協調がいかに米国にとって「得」になる面が多いかを、具体的事例を用いながら説明したであろう。双方の顔を立て、「まあまあ」外交が日本の得意技だ。安倍首相の存在感だけが目立った場となった。
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by everyoung
| 2017-05-31 20:47
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